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□ 第1部 [ ベランダ ] □

□ Veranda □

(ベトナム編)

『潮と太陽』:C

 ヒロさんの他に、バスの中にはトネさんとヨウコさんという二人の日本人が乗っていた。

 三人で旅をしているわけではないけれど、「サイゴンで落ち合おう」と以前に約束して、一緒にニャチャンに行くそうだ。

 僕は一目見て、

あー。トライアングルラブやね!

 と失礼な思考をしてしまった。いやだって、男二人と女一人なら、そうやねん!

 絶対、そうやねん!!


 トネさんは片目を赤く腫らしていて、

(あー、どないしたんやろなー、でも聞いちゃあかんのかなー、気になるなー)

 とヤキモキ。実はこれが後々の伏線になるということに、このときはまだ知る由もなかったのである…(ヤッタ。この文章一度使ってみたかったのだ!)。と仰々しく言ってはみても、たいした伏線じゃないよ。ほんと。

 トイレ休憩。サイゴンを離れると、赤い土の大地が広がるばかり。メコンデルタ地方にいったときのような悪路ではないし、道は舗装されているけれど、大規模な集落というのは見当たらない。でも主要幹線だから、田舎過ぎ!ということはない。なんか曖昧な説明だな。

 とにかくそういうこと。

 オシッコを垂れ流して戻ってくると、バスからギターの調べにのって「たま」の「さよなら人類」が聞こえてくる……、うーんッ、「たま」の「さよなら人類」??

 ちょっと早足でバスに戻ると、トネさんがギターを弾きながら歌っている…。

 そのトネさんの席の窓の外では、給油待ちのベトナム人たちが群がって、ニコニコ(ニヤニヤ?)しながら日本の歌に耳を傾けている。カップルも自分たちの席でそれを聞いている。

(ああ、いいなあ……)

 と、どうしようもなく感激してしまうワ・タ・シ。トネさんが歌う。みんなが聞く。僕も歌いたくなるわ。なぁ〜そりゃ。いや、歌わなかったけど。


♪今日 人類がはじめて 木星についたよー(ついたーッ) ……


 くあーッ! ばかにすんじゃねー!! って感じです。

 こういうのって最高に良いよね。「言語の壁なんて、肌や目の色なんて〜〜」とさっき書いたけど、それでも歌にかなうものなんてないのかも知れないね。

 歌うだけで友達ができちゃうのであれば、歌ってスゴイよね。


 バスが発車する時間になって、トネさんはギターを弾くのをやめる。歌も止める。

 群がっていた人たちが、拍手をしたり手を振ったりしてその場を離れて行く。でもみんな笑っている。楽しそうで、嬉しそうだ。

 トネさんがヨウコさんに向かって言った。

「ベトナム人をガメツイとか、嫌いって言う人、結構いるけど、良いヤツラじゃん。なあ」

 ホントそうだと思った。確かにガメツイところあるけれど、全然嫌いになんかなれない。

 バスが動き出した。トネさんが身を乗り出して、さっきのベトナム人たちに向かって叫んだ。

Xin Chao!!」(←ベトナム語で、「こんにちわ」の意。この場合ちょっと違うと思うけど、そんな細かいこと気にしません)


 歌ってスゴイなぁ。

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