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□ 第1部 [ ベランダ ] □

□ Veranda □

(ベトナム編)

『潮と太陽』:D

 朝! 早起き!! 素晴らしい天気!!! 良い気持ち!!!!

 新しい街、ニャチャン! ズバリ海の街! 昨夜着いて探したホテルは海からすごく近くて、黙っていても潮のかおりがフラフラと千鳥足で迫ってくる。ああ、海なんて何年ぶりかしら…。この魔力からは逃れられないね…。

「よっしゃ! 今日は観光をして、それから海に入って、ええと、ええと……」

 とにかく、早速自転車をレンタルして海へ駆けだした。


 ざぶーん。
 ざざざー…。

 どばーん。
 ざざざー…。

 きゃしゃーん。
 ざざざー…。



 「海だあッ!」

 広い。あっちから向こうまでずっと砂浜が続いている。そしてその海岸線道路には行儀よくヤシの木が並んで植えられている。ちょっと遠くには島だって見えちゃうよ。景観ばっちり。僕は自転車にまたがったまま、駐車場(?)から一段低くなった砂浜を眺め回して、とびっきりはしゃいだ。

 ものすごい炎天下。何もしていなくても汗が噴出してきてたまになる。暑い日、目の前に海岸! ときたら、やっぱり泳がなきゃ失礼なわけで……。

でも待て

 と僕は考える。

「一人だけで海? それってスゴク寂しいやつに思われるじゃないか!(←1人旅なんだから寂しいのは当然です)そんなこと、おれのプライドが許さないだろ」

 オレはどうしたらいいのだろうか。このオレをここまで迷わせる海の魔力恐ろしきかな。

「……泳ぐの、やめよ……」

 と、僕は自転車をこいでその場から去った。

 プライドが勝ったようで。


 「うおぉぉぉッ!?」

 きききききぃぃぃーー。

「うお、と、とま、とまらねェよ、このチャリッ!

 きききききききぃ……。

 ちょうど橋の真ん中。自転車がきちんと止まったのを確認して、僕は今すれ違った滅法早い自転車にまたがった、見覚えのある日本人男性に向かって声を張り上げた。

「オオノさぁーーーーーんッ!!」

 遠くからきききーッという同じ様な悲鳴が聞こえてくる。何気にあっちの自転車も上手く止まれないらしい。彼は橋を少し過ぎたあたりでターンして、こちらに戻ってきた。

「やっぱりオオノさんだった。おひさしぶりです」

「アイカワくん! 一日ぶり!!」

 もう皆さんお忘れ?

 オオノさんはサイゴンで出会った、なんともまあ奇妙な縁だけど、筑波大出身、そしてお互いちょー近いところでバイトをしていた、あのオオノさん。


 オオノさんと昼食を取ることになった。再会、っていうかこのまえ別れたばっかりだけど、まぁ、無事の再会を祝し、そして同じ筑波の大学ということで(意味不明)。

「どこで食べようか」とオオノさん。

「まかせてください」と意味ありげに僕。「こんなこともあろうかと、ちゃんと調べてあるのです!」とショルダーから取り出したのは、『地球の歩き方 ベトナム』!!(ロンプラの日本語版が出たいまではアンチ『歩き方』になりつつあるけど…。まぁ…やっぱりジャパニーズガイドブックといったら『歩き方』だよね…)。

「ええと…」と僕は地図と現在位置を確かめて、「橋を渡りきって、もう少し行ったところに横道があるんですけど、そこの入って狭い橋を渡ると、そこがドンッ! …だぜ?」

 なにが『ドンッ』やねん。


 果たして。

「ねえアイカワくん、その横道はまだなの?」

「ええ、と……」

 暑いやら迷ったやらで、背中を汗がどっと流れて行く。

「いや、一本道だから迷うはずないんですけどね…てへ」

「もどったほうが良いよね…、通り過ぎたんだよ、きっと」

「オオノサン、あんたの意見はいちいちもっともだ」皮肉じゃないよ。「もどりましょう」

 果たして、それはあった。決して『歩き方』の地図がいい加減とか、そういうことではなく。そもそも、その横道というか、狭い橋というか細い橋というか……。

「っつーかこれ、狭すぎでしょ」

 家と家の間にほっそい路地があり、その向こうにこれまた恐ろしく細い橋が一本かかっている。

 そりゃぁ、見落とすよね。見落とす方が正常だよね(←自己弁護)。いや、実際細いし見落としやすいんだってばよ。信じてくれよー。

「まあ、これで昼食にありつけるからよしとしようよ、ね、アイカワくん。いやぁ、ヨカッタヨカッタ」

 甘かった。ぼくたちの考えは甘すぎた。


 そのレストラン(?)は川の中洲にある…というのだろうか。とにかく、橋を渡って川をこえなければいけない。

 僕らは蜘蛛の糸みたいな細い橋を渡りきって、砂利の上に自転車を止めて厳重に鍵をかけた。

 そしてオレたちは、栄光の昼食に向けて歩き出した、そのときだった!!。

な、なにぃッ!?

「あれは……ば、ばかなぁぁぁぁぁッ!?

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