□ 第1部 [ ベランダ ] □
□ Veranda □
(ベトナム編)
『メコンデルタの人々』:B
二泊三日のツアーも終わり、一路サイゴンへと、再びバスに乗って。
途中、バスがとまった。
(どうしたんだろう?)
と窓から身を乗り出すと、そこはちょっと広い場所で、事務所みたいな建物があった。そしてバスの運転手さんがなにやら親しそうに話していたので、
「あー、シンカフェのブランチかー」
と納得していると、突然女の子が二人、バスに乗り込んできた!
「なに、なに!? バスジャック?! はい、抵抗しません!」
慌てて手をあげる。しかしその女の子二人は、ニコニコしながら両手いっぱいに茶色く丸い何かの実を差し出したのである。
「……なに、これ?」
「ちょめちょめぱふぱふ! ぷぴーッ」(←ベトナム語で何を言っているかわからない)
女の子は、その茶色い物体(あ、ちょっと良い香り)を手の中に押し込めた。
「これ、果物? どうやって食べるの?」
実際、それはどう見ても果物には見えない。
表面はザラザラしてるし、茶色いし、でもかろうじてその香りで果物と判断できる。女の子は、ニコニコしながら食べ方を実演して見せた。
ペリペリー、と表面の皮を剥いて、中から出てきた白い果肉を口に含む。しばらくモグモグとしたあとに、大きな黒い種を吐き出す…って、食べ方も何もあったもんじゃねー! そのまま食えば良いだけやん!
「じゃあ、頂きます」
と言って、僕もペリペリと剥き始める。出てきた果肉を口に放り込む。
「……あ、美味ェ! ライチに似た味がする…」
「美味しい?」(←例によってわからないけど、こう言ったのだと解釈)
「美味い、美味い! でもこれ、冷したほうがもっと美味しいね」
「あんた、ごっつカッコエーなぁ! サービスするけん、もっと食べればいいでごわす!」
ベトナム語で理解不能だったけど、とにかくそんなことを言っていたハズだ。彼女はさらに茶色い果物を押し込んだ。僕はひたすらペリペリと剥いた。
その果物の名を知ったのは、もうちょっとあとのこと。竜眼、リュウガンという。
そのあとも一路サイゴンへと向かったわけだけど、途中で別のツアーの人たちと合流した。僕の隣にドイツ人の青年が座って、彼も果物を分けてくれた。
僕が彼の座席のポケットに突っ込まれているそのピンクの物体を目にして、興味深い視線を向けていると、
「これかい? これ、果物だよ」
と言って、ポケットからソレを取り出した。
卵形をしており、表面のピンクの皮に緑色をした突起がボツボツとついていて、はっきりいってグロテスク。さっきのリュウガンと同じく、どうみても果物には見えない……いや、色が鮮やかなだけましかなぁ?
でも普通、これを食べようとは思わないんじゃないか……? 普通に毒が入っていそうだもん!
「え、これ果物なの? へェー…」
と僕は目を丸くする。彼は、
「ドラゴンフルーツ(ベトナム名:タンロン)って言う。食べてみる?」
僕が頷くと、彼は懐からフルーツナイフを取り出して上下に切り込みをいれる、と思うと、面白いくらいにあっさりと二つに割れてしまった。
「うわ、随分とサクッとしてるんだぁ。ぎょッ!!」
と、僕は目を丸くした。中身、つぶつぶだらけ!! キウイを切ったヤツを想像すればわかりやすい。もっとも、中身はグリーンでもイエローでもなく、紛れも無いホワイト。白い果実に、粒々の種が所狭しと並んでいるわけだ!
彼はさらに、縦に切れ目を入れる。するとそこから、ばかみたいに簡単に皮が剥けるじゃぁないかいッ! 思わず、へぇーッと感心してしまった。
「はい、どうぞ。美味しいよー」
彼はニコニコしながら分けてくれた。
「ありがとう。……ん、んーーッ!!! こ、これはぁーーーッ!?!?」
美味い! 美味い!! 美味い!!!
「これは美味いよ! ねえ!!」
僕、思わず興奮。
「でしょ? これ、おれのお気に入りだからねー」
と彼もニコヤカ。
いやー、フルーツって素晴らしい。自然の恵みって素晴らしい!
ドラゴンフルーツは、未だに僕のトロピカルフルーツ、ナンバ1です。
ちなみに味はサッパリ。ちょっとキウイと似ているけど、ほとんど酸味はない。是非一度食べてみてください! 東南アジア全域で食べられるけど、原産国はすべてベトナムなんだって。
だから新鮮なドラゴンフルーツはベトナムで!
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