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□ 第1部 [ ベランダ ] □

□ Veranda □

(ベトナム編)

『潮と太陽』:@

サイゴンに着いたのは夜で、ひどいスコールが降ったあとだったで、そこかしこで水路から水が溢れて川ができていた。

 バスを降りるとジメジメと気持ちの悪い空気が肌をヌルヌルとすり抜けていく。僕はイタリア人夫婦とイスラエルカップルに近寄って、

「Have a nice trip!」

 と声を掛けた。いやー、一度言ってみたかったんだよね、これ! そして、それぞれが口々に、「You,too!」とか「Have a nice trip,too!」と笑いかけてくれて、手を差し出してきた。

(うわー、めっちゃうれしー!)

 と舞い上がりながら、その手を握った(ちなみにそのイタリア人夫婦、ガブリエルとガブリエラには再会することとなる)


 HOTEL265というところに宿をとった。

 先日泊まったHOTEL211に戻ろうとも思ったのだけれど、同じ宿に戻るのがちょっとはばかれた。で、結局違うホテルに…っていうか、でも実を言うと、HOTEL211とは同系列なのでした……あははー。

 ちなみにどうでもいい知識だけど、サイゴン特にこのファングーラオ通り近辺の安宿では、番地をそのまま宿名にしているところが多い。紛らわしい名前も非常に多いので、(間違えてやってきた客を当てにしている面もあるのかなぁ)と変な勘ぐりを入れてしまうわけで……。ほんとまぎらわしいよ!

 とったのは三人部屋のドミトリー(相部屋)で、入ってみるとあいているベッドは真ん中のひとつだけだった。僕はそこに荷物をおくと、部屋を見渡した。

 誰もいない。

 入り口に近いほうのベッドは、日本人だろうか…、奥のベッドは、英語の本がおいてあるから外人さんである。

 部屋は六階にあったから、窓を開けるとファングーラオ周辺のトタン屋根の景色が見渡せるし、風も入ってくるので気持ち良い。難点はエレベーターが無いことか…六階は疲れます。意味も無く駆け上がると、部屋に着いたときにはゼェゼェ言ってる。

 そんなふうにして時間を潰していると、ドアが開いて、日本人の若い男性が入ってきた。彼が、この旅で一番初めに会った日本人の男性。

「こんにちは」  と向こうが挨拶をしたので、僕も慌てて挨拶を返す、……と、なんかジーッと僕の方を見詰めている……、なになに、この視線!? 俺に惚れた!?

「キミ、どこの大学?」

 と突然言った。「いきなり告白されたらどーしよう!? きゃーッ」などと思っていたから、安心したやらがっかりしたやらで。とにかく、予想していなかった問いかけに、少々ぎくりとしながらも、

「えっと…、Tくばの…(ッつーか大学名言ってわかるかね〜などと思いつつ)」

「うそ、T波大?! やっぱりねーッ!!」

 といい終わる前に彼が口を挟んだ……って、

や、やっぱり……??

「うんうん、僕と同じニオイがすると思ったんだよー、そうかー、T波大かー、うんうん」

 彼はニコニコしながら頷いている。

「いや、あの、その、おれは、と、……T情……(T書館情報大学の略称)の方なんですけど…」

「ああー、T情かぁー」

「同じニオイって、あの、T波大なんですか……?」

「うん、そう、去年卒業したんだけどね。僕、オオノです」

 とオオノさんはニコヤカに言った。


 ということで、ベトナムくんだりまで何の話をしているんだか、何故かつくばのローカルネタがはじまった。

 北方園とか、松見公園とか、アイアイモールとか……。いやあー、世の中には奇妙な縁もあったもんだ。まさかベトナムでこんなに近い人に(しかも最初に)出会うとは……、運命を感じます。

「アイアイモールのサ、『カプリチョーザ』ってお店知ってる?」

 とオオノさん。

「知っていますよー、一度だけ行ったことがある」

「僕そこでバイトしてたんだよー」

えぇぇぇぇええええぇぇぇぇッ!?!?

 僕はびっくらこいた。すげーびっくらこいた。

「ウソでしょッ、あの、おれ『けやき』でバイトしてたんですよ!!(少しだけど)」

えぇぇぇぇええええぇぇぇぇッ!?!? うっそーッ! 『けやき』って目の前じゃん! うわー、僕とアイカワくん、絶対どこかですれ違っているよ、絶対!」

 そうなのである。オオノさんが『カプリチョーザ』でバイトしていた時期と、僕が『けやき』でバイトしていた時期までが、ほとんど一緒だったのである! おいおい……、こんな偶然ってあるわけー?

 しばらくの間、僕らは沈黙してこの奇妙な偶然に浸っていたわけで……。

 「ベトナムのいくつもあるゲストハウスの同じ部屋」「Tくば地区」「目の前でバイト」。

 偶然が三つ重なれば必然というけれど……、いや、この場合は違うかな。偶然が三つというよりも、境界条件が三つ揃ったというべきかしら? ま、どっちでもいーや。とにかく、僕は感動しました。

 オオノさん大好き!! 親近感。

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