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□ 第1部 [ ベランダ ] □

□ Veranda □

(ベトナム編)

『潮と太陽』:A

オオノさんとは、翌日に一緒にカオダイ教寺院とクチトンネルに行った(あのあと、お互いに共通の知人がいることが判明。世の中って凄く狭いと認識した瞬間でした)。

 カオダイ教寺院は、キリスト教とイスラム教と仏教と、ええと…とにかく色々な宗教をごちゃまぜにした宗教で、ビクトル・ユーゴーとかが聖人に崇められていたり、とにかく、かなり興味深い宗教だった。

 その周辺地区ではかなりの数の信者がいるらしい。でも寺院内の趣味はあまり良くなかった…(あ、こんなこと言ってはダメだよね…)。

 クチトンネルは、ベトナム戦争時代にベトコンが用いた秘密基地である。

 通路はとても狭いのだが、台所なども作られていたり、敵に気付かれないようにと工夫もされていて、カオダイ教寺院とは別の意味でとても興味深かった。

 当時のトラップも展示してある。いまでこそ「ほぉー」と溜息をつくくらいだが、戦争時、敵対兵士にとっては恐怖だったんだろうなぁ。実際にこのトラップでどれくらいの人間が死んだのだろうか、と考えると怖くなってしまう(あ、またマジメぶっちゃった!)。


 そうそう、閑話であるが、実家にコレクトコールをかけた。KDDIのオペレーターさんに頼んで、受話器を持ちながら父が出るのを待ったのだが、オペレーターさんが、

「あの…」

 と変な声で話し掛けてきた。

「男性の方が出られたのですけど、『いえ、結構です』と言って切られてしまったのですが…」

「はい?」

 と、オレはすっとんきょうな声をあげた。

「あの、向こうの方、勧誘か何かと勘違いしたんじゃないでしょうか……?」

すみません、ウチのバカ親父です。本当にすみません。ごめんなさい、ごめんなさい。ご迷惑でなければもう一度かけなおしていただけますか?」

 全く、親父は!! 話は最後まで聞けよな〜! 顔から火がでるわ、喉から手はでるわ、腹からサナダムシは出てくるわで! ホント参ったね。

 ったく、親父はバカだけど、息子がしっかりしていて良かったよ。親父ったら誰に似たのかしら! もうッ!!


 オオノさんはクチトンネルへ一緒に行った翌日に、ニャチャンへと旅立った。僕はさらにその一日あとに、ニャチャンへと。

 買ったのは、TMブラザーズというツアー会社のバスチケット(ベトナムにはツーリストバスというのがあって、それだとサイゴンからハノイまでなんと20ドル強! 主要都市を経由しながら行ってくれるので、途中下車、途中乗車も可能。というかハノイ一直線は体力的に無理です。とにかく、そんなオトクなチケットだけれど、運転は荒い。結構事故を起こす。シン・カフェやキム・カフェ他、著名なツアー会社で取り扱っている)。

 僕はそのバスの中でも、色々な人に出会った。日本人三人にも出会った。でもとりあえず彼らのことは置いておいて、まずは通路を挟んだ向こう側に座ったベトナム人のカップルの話をしようと思う。

 二人はむっちゃラブラブで、普通にひざまくらとか、ちゅ・ちゅーとかもしとります!

 おいおい、みせつけるじゃねーか、ねえちゃんよーッ!? って感じです。

 しかもそのカップルがカッコヨイのとカワイイのとで、お似合いなのがまた許せない! これって嫉妬ってヤツだよね。

 僕がジィーッとそちらを嫉みの眼差しでにらんでいると、彼ラはなにやら、バッグからアルバムを取り出して、くすくす笑いながら眺め始めた。

 あーッ、あっついなーーッ、もぉーッ!! エアコンきかなくなっちゃったよーッ!?(あ、これウォーターボーイズネタね)

「ったくおめぇらぁぁぁぁぁぁああぁッ!?!? イチャイチャしてんじゃねェぞビチグソどもがぁッ!!!!」

 とは言えないオレ……悶々としていると、オレの前の座席に座っていたヒロさん(日本人三人組のひとり)が、コチラをちらりと見て、

「あれ、見たいなぁー」

 と言ってきた。ヒロさんも気になるらしい、ということで、二人で話し合った結果、

「それ、見せてください」

 とベトナム語で話し掛けてみることにした。二人ともベトナム語なんてできなかったけど、とりあえず虎の巻を取り出して、頷きながら作戦を練り始める。

 で、なんとか文章が出来上がる。

「その写真を見せていただけますか」

 と僕らはベトナム語で言ったつもり。でもまったく通じていないのである。何故だろう(ベトナム語は中国語と同じで声調がある――しかも6つ――ため、ただ単語を読んだだけでは通じない。チャイナの「マァ・マァ・マァ・マァ」ってこと)

 もうオレらは言葉なんか無視して、とりあえず身振り手振りで「それッ」「それやって!」「みせてくださいーッ!!」とか無茶苦茶に言った。するときょとんとしていた女性のほうが、

「ああ、これをみたいの?」

 と、綺麗な英語で笑いかけてきたので、僕ら二人して、ムンクの『叫び』みたいになってしまった。

 はじめから英語使えばよかったんだね。バカだね。

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